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2020年9月 7日 (月)

ファクトフルネス/ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

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 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
 A 約2倍になった
 B あまり変わっていない
 C 約半分になった

上記の問題の正解はCだ。

しかし、正解率は平均で7%だったという。

仮に、チンパンジーにABCの三択で選ばせたら、正答率は33%になる。

チンパンジーよりも劣る正答率。

なぜ、一般市民から高学歴の専門家までが、クイズでチンパンジーに負けるのか。

事実は、過去20年のあいだ、極度の貧困にある人の数は半減している。

しかし、-暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。

昔に比べたら大きな進歩だ。

しかし監視の目が厳しくなったことで、悪いニュースがより目につくようになり、皮肉なことに「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。

いま起きている悪い出来事に人々の目を絶え間なく惹きつけるのがニュースというものだが、悪い出来事ばかり目にしていれば、誰でも悲観的になる。

加えて、思い出や歴史は美化されやすい。

だからみんな、1年前にも、5年前にも、50年前にも、いま以上に悪い出来事が起きたことを忘れてしまう。

私たちは、次のような先入観を持っていないだろうか。

「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」

少なくとも先進国においてはそれがメディアでよく聞く話だし、人々に染みついた考え方なのではないか。

著者はこれを「ドラマチックすぎる世界の見方」と呼んでいる。

精神衛生上よくないし、そもそも正しくない。

時を重ねるごとに少しずつ、世界は良くなっている。

何もかもが毎年改善するわけではないし、課題は山積みだ。

だが、人類が大いなる進歩を遂げたのは間違いない。

これが、「事実に基づく世界の見方」だ。

人間の脳は、何百万年にもわたる進化の産物だ。

わたしたちの先祖が、少人数で狩猟や採集をするために必要だった本能が、脳には組み込まれている。

差し迫った危険から逃れるために、一瞬で判断を下す本能。

唯一の有効な情報源だった、うわさ話やドラマチックな物語に耳を傾ける本能。

食料不足のときに命綱となる砂糖や脂質を欲する本能。

これらの本能は数千年も前には役立ったかもしれないが、いまは違う。

砂糖や脂質が病みつきになり、肥満が世界で最も大きな健康問題になっている。

大人も子供も甘いものやポテトチップスを避けるようにしたほうがいい。

同じように、瞬時に何かを判断する本能と、ドラマチックな物語を求める本能が、「ドラマチックすぎる世界の見方」と、世界についての誤解を生んでいる。

「恐怖」と「危険」はまったく違う。

恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。

一方、危険なことには確実にリスクがある。

恐ろしいことに集中しすぎると、骨折り損のくたびれもうけに終わってしまう。

パニックになった新米医師が、核戦争の心配をしすぎるあまり、患者の低体温症に気づかないかもしれない。

地震の心配はしても、下痢で亡くなる数百万人に気づかないかもしれない。

飛行機事故や化学物質の心配はしても、海底が砂漠になっていることに気づかないかもしれない。

コロナに罹患することを恐れるあまり、経済を止めてしまうことの危機に気づかない。

大事なことは「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」ことに気づくこと。

恐怖と危険は違うことに気づくこと。

人は誰しも「身体的な危害」「拘束」「毒」を恐れているが、それがリスクの過大評価につながっている。

恐怖本能を抑えるには、リスクを正しく計算すること。

現代人は情報の洪水にさらされている。

そして、何がファクトなのかがわからなくなっている。

それを解決する方法はあるのか。

何年もの間、事実に基づく世界の見方を教え、目の前の事実を誤認する人を観察し、そこから学んだことを一冊にまとめたのがこの本だ。

何かファクトかわからなくなっている現代人には必読の書だと思う。

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