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2020年9月21日 (月)

声/アーナルデュル・インドリダソン

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「突然の声変わりだった」寒いホテルの部屋でかつての指揮者ガブリエル・ヘルマンソンはエーレンデュルに語った。「声が割れたのだ。のどに雄鶏が飛び込んだ、というのがよく使われる表現だ。それも期待された大きなステージで、ソロの歌い出しのときに。それですべてが終わったのだ」

以前、同じ著者の「緑衣の女」を読んで他のミステリーとは違った人間の闇の部分を深くえぐりだすようなストーリーが印象に残ったので、同じ著者の「声」を読んでみた。

クリスマスシーズンで賑わうレイキャヴィクのホテルの地下室で、一人の男が殺された。

ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。

捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。

被害者はかつては有名なボーイ・ソプラノでありながら、12歳の時の舞台で、声変わりのために立ち往生をしたという無残な過去が明らかになる。

かつて天使の歌声をもつ美少年として父親に溺愛されていた少年グドロイグル。

虚栄心に駆られて叱咤し続けた父親は失望し、態度をガラリと変える。

また姉との確執もあり、彼は家族を捨てる。

最後に辿り着いたのが、ホテルの地下室に住まい。

ドアマンと雑用をこなすという哀れな境遇。

やがて捜査官エーレンデュルの捜査により彼がゲイであり少年相手の「性交」を目撃され激高した少年の姉に殺されたことが無残な格好で発見された理由だと分かる。

一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。

自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実。

長編だが一気に読ませる。

他のミステリーとちょっと違ったテイストがある。

同じ著者の別の本を読みたくなった。

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