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2020年10月10日 (土)

ネガティブな感情が成功を呼ぶ/ロバートビスワス=ディーナー、トッドカシュダン

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 あらゆる心理状態には、「アダプティブ・アドバンテージ(変化に適応するための優位性)」がある。従ってどれかひとつがよいと決めてそちらをめざすのではなく、さまざまな感情──とりわけ目を背けがちな感情──の有用性を考え、どんな心理状態でもうまく舵を取って生きる能力を身につける方がいい。

一般的にはポジティブ感情は良いものとされ、ネガティブ感情は悪いものとされている。

しかし著者は、人間に与えられた自然な感情をすべて活かせる人、つまりポジティブ感情もネガティブ感情も受け入れて幅広く活用できる人が、もっとも健全であり、人生において成功する可能性が高いという。

私たちが将来どんなことが自分を幸せにするのかを正しく予想できない理由のひとつは、「自分には不快な感情に耐えたり、適応したりする能力がある」ということを見落としているからだ。

私たちは、よいことに関しては、ものすごくいい気分になるだろうと過大に期待し、辛い状況に関しては、それに耐える自分の能力を過小評価する傾向がある。

大事なのは、ポジティブもネガティブも含めた広範囲の心理状態を受け入れる能力を身につけて、人生の出来事に効果的に対応すること。


ある創造性を調べた研究で、ネガティブ感情とポジティブ感情の両方を経験した人たちの出したアイデアは、ずっと幸福だった人たちの出したアイデアより、9パーセントほど創造性において優れていたという。


適応能力というのは、ネガティブ感情に耐えることと、そこからポジティブ感情に移る努力が、バランスよくできることだ。

ネガティブな経験を避けたり、ネガティブ感情を抑制したりすることは、仕事のモチベーション向上にも個人的成長にも役に立たない。

実際、私たちはポジティブとネガティブの両方の感情の間を行き来する。

「ホールネス」を持った人たち、つまりよいことも悪いことも受け入れ、与えられた状況の中で最良の結果を掴む人たちこそが、健康を保ち、仕事でも学問でも成功し、幸福な人生を深く味わうことができる。

著者はこれを、20パーセントのネガティブ優位性と考える。

ホールネスを持つ人とは、約80パーセントの時間はポジティビティを感じ、残りの20パーセントの時間はネガティビティを有益に使える人のことだ。

無論この数字は正確ではなく、絶対的なもののように使ってはいけない。

むしろ、80:20という割合を、ホールネスを理解するための基本と考えればよい。

ポジティブもネガティブも包含する「ホールネス」を持つ人たちは、目標に対してもっと柔軟に行動できる。

事態がよいペースで進展していれば投資を続け、ダメだと判断すれば見切りをつけて別の目標に切り替えるのである。

ホールネスを得る上で大事なことは、ネガティブ感情を避けることではなく、それをネガティブと考えないことである。

ネガティブ感情は気分のいいものではないが、それを拒んでは、生きる上で有益なツールが活用できない。

いつもポジティブなことを探して、ネガティブ感情を消したり、押し殺したり、隠したりしていては、人生という試合に勝利することは難しい。

ネガティブ感情を無理に取り除こうとすると、意に反して、幸福感、生きる意味、気概、好奇心、成熟、叡智、人間的成長なども一緒に損なわれるからだ。

ネガティブな事柄に無感覚になれば、ポジティブな事柄に対しても無感覚になる。

どのネガティブ感情も、「何かがうまく行っていない。すぐ対応する必要がある」と知らせてくれるシグナルである。

怒りやその他のネガティブ感情を、感じるそばから抑え込んでしまうと、それらがなぜ湧いてきたのか、それがどんな行動を促しているのかわからない。

これは非常に重要なことだ。

ポジティブ一辺倒の風潮に違和感を感じている自分としては、本書の主張はすごく腑に落ちる。

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