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2020年10月29日 (木)

ディスコルシ「ローマ史」論/ニッコロ・マキァヴェッリ

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 現在や過去の出来事を考えあわせる人にとって、すべての都市や人民の間で見られるように、人びとの欲望や性分は、いつの時代でも同じものだということが、たやすく理解できる。したがって、過去の事情を丹念に検討しようとする人びとにとっては、どんな国家でもその将来に起こりそうなことを予見して、古代の人びとに用いられた打開策を適用するのはたやすいことである。また、ぴったりの先例がなくても、その事件に似たような先例から新手の方策を打ち出すこともできないことではない。

『君主論』にならぶ、マキァヴェッリの著書。

ルネッサンス期、官僚として活躍したマキァヴェッリは、祖国が生き残る方法を模索し続け、古代ローマ史にその答えを求めた。

不利な状況での戦い方、敵対する勢力を効果的に漬す方法、同盟の有利な結び方、新兵器への対処方法、陰謀の防ぎ方と成功のさせ方、そして、最強の国家体制について述べている。

中でも印象に残った言葉は以下の通りだ。

「いったいに人間の行動には必要に迫られてやる場合と、自由な選択の結果による場合がある。そして、その行動が威力を発揮するのは、選択の威力が発揮できない、時と考えられる。」

「その温和な土地柄のために助長される怠惰な風潮については、土地の恵みに慣れきった人びとの心を勤勉にするように、法律の力を借りて規制しなければならない。そのためには、人間を惰弱にし、軍事にたずさわれない腰抜けに変えてしまうほど最高に快適で豊かな地方において、賢明な立法者が、どのような方策を打ち立てたかを学ぶべきであろう。」

「騒動を一番多く引き起こすのは、持てる者の側のように思われる。何かを失いそうだとする恐れが、新たに物を手に入れようとする人びとの抱く欲望と、寸分たがわぬ結果を生み出すからだ。」


「完全無欠で何ひとつ不安がないというようなものは、この世の中にはありえないからである。」

「他人に支配されることに慣れてきた人びとは、どのようにして自分たちだけの力で防いだり攻めたりしたらよいかも知らず、それを知っている君主もいなければ、通暁している人もいないので、たちまち隷属状態に陥って、少し前に背負わされていた重荷よりも、はるかに苛烈な圧政にさらされがちなものである。」

「人民が健全でありさえすれば、どんな騒動や内紛が起こったところで、損なわれるようなことはない。けれども、人民が腐敗していれば、どんなに法律がうまく整備されていたところで、何の足しにもならない。最高権力を持った一人の人物が出て、人民が健全になるように、法律を守らせるよう舵をとらぬ限り脈はない。」

「惰弱な君主でも強力な君主の後を継いだ場合には国家をしばらくは維持することができる、しかし無力な君主が二代続いた場合には国家を維持することはできない。」

「人民というものは、自由を失わずに持ち続けている場合よりも、むしろ自由を取り戻した時のほうが、過激な行動を示すものだ。」

「人間は生まれながらにして虚栄心が強く、他人の成功を妬みがちで、自分の利益追求には飽くことを知らないから、部下の将軍が勝利を博したとなると、その君主の中には猜疑心が芽生えるのは避けられない。しかも、いったん芽生えた君主の不信感は、将軍の思い上がった横柄な言動に刺激されて、高まらざるをえない。」

「人間は、とことんまで陰険になり切ることもできなければ、また、そこぬけに善良になることもできないものである。したがって、大勝利を博した後の将軍は、えてして、軍隊ときっぱり手を切ったり、へりくだって身を処していくことが、どうもできないものである。かといって、自分の行為に尊敬を抱かせる思いきった手段に出ることもためらわれる。したがって、どちらつかずでぐずぐずするうちに、息の根を止められてしまうのである。」

「やむをえず戦いを交えねばならない必要にせまられなくても、人は野心にかられて戦いを挑むものだ。この野心というものは、人の心の中を強く支配しているもので、人が望みのままにどんな高い地位にのぼったところで、決して捨て去れるものではない。」

「平民というのは、自分に関連する事物を概括的に把握しようとするときに誤りを犯しやすいものだが、逆に個々の事柄を体験してそれを知れば、そんな誤りを犯すこともない。」

「なにごとをやる場合にせよ、特に必要に迫られてどうしてもそうせざるをえないような時でも、万事にぬかりのない人物なら、自分から進んでそれをやっているような印象を、いつも人びとに植えつけるものだ。」

「弱い国家は常に優柔不断である、決断に手間どることは常に有害である。」

現代にも通じる、非常に考えさせられる言葉だ。

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