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2020年10月 6日 (火)

クリティカル・リーディング/福澤一吉

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 クリティカルは日本語では「批判的」と訳されることが多いのですが、日本語の「批判的」には一般に、相手に対して否定的で、攻撃的というような意味が含まれています。対して英語のクリティカル(critical)には、別段、否定的な意味が込められているわけではなく、「いろいろな角度から検討する、前提を揺さぶってみる、他の考えをぶつけてみる」など、肯定的で建設的な意味合いが強い。

クリティカル・リーディングとは、つぎの一連の操作のことを指す。

まず、テキストに含まれる論証部分をその他の部分から切り離し、取り出す。

ひとつひとつの論証において、どれが根拠にあたるのか、どれが主張や結論なのかを見定める。

同時に、そこで使われている根拠の内容がどのような種類かを確かめる。

また、論証の表面に出てこない「隠れた理由(論拠)」も推定する。

これにより、根拠から結論までのプロセスについて検討する。

さらに、テキストで使われている論証自体の評価も行う。

要するに、クリティカルリーディングでは能動的に、書くように読むのである。

それによって、

第1に、著者すら気がついていない新たな視点、観点、仮定、前提に気がつく。

第2に、テキスト全体に使われている論拠の種類の比較ができるようになる。

第3に、世界を把握するための視点を持てるようになる。

こういった効果が得られる。

クリティカル・リーディングの中心的目的はテキストを論理的に分析・吟味し、評価し、さらに、そこから新たな問いや疑問を発信するスキル、すなわち「批判的思考」を身につけること。

論証するということを大ざっぱに言えば、何らかの理由から、何らかの結論を導くこと。

論証とは「何らかの理由を基に、何らかの結論を出すこと」である。

論証の基礎的な形は、「理由、だから、結論」。

「結論。なぜなら、理由」でもかまわない。

このように、論証が行われていることを明確に示すには、順接の接続詞の中で、理由・結論の接続関係を明示するものを使う。

よく使用されるのは、「だから」「したがって」「それゆえ」「なぜなら」「つまり」「結論として」など。

論証における根拠、主張、論拠の三つを区別しておくことが大事。

普段の私たちのやりとりはせいぜい、根拠と主張の組み合わせだけだ。

しかし、より深い話し合いをしていたり、テキストをクリティカルに読む場合などは、この三つを最低限、意識する必要がある。

根拠と論拠は主張の理由として使われるが、根拠が主張を直接的に支えるのに対して、論拠はそれらのつながりを支える点で違っている。

また、根拠、主張、論拠の三つの違いを意識するためには、この三つをつなげる形で覚えておくといい。

たとえば「前田君はアメリカに八年間在住していた(根拠)。

だから、前田君は英語もネイティブ並みだ(主張)。

なぜなら、自分が生まれた国の言葉でなくても、ある土地に一定の間暮らしていれば、その現地の言語を獲得するものだからだ(論拠)」

となる。

「根拠、だから主張、なぜなら論拠」という形式。

狭義の論理的な文章とは「論証をしている文章」を指す。

文で表現されている主張が明確であることが前提で、それぞれの文に含まれる複数の主張間の関係性が接続詞・接続語句により表明されている文章のこと。

文章を書く場合も、この「根拠、主張、論拠」の三つを意識するとよいのかもしれない。

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