秋元康の仕事学/NHK「仕事学のすすめ」制作班
「僕の企画のリュックサックのなかに今ぽーんとタネが入ったんですよ」
本書は秋元氏へのインタビューをまとめたもの。
秋元氏は、肩書きこそ「作詞家」であるが、そのほかにも小説や、映画の企画・原作や監督、漫画の原作を手がけたり、人気アイドルグループAKB48の総合プロデューサーであったりと、ひとつの肩書きに縛られることなく、その活動は多岐にわたっている。
特に優れているのはその企画力だが、秋元氏は企画について次のようにいっている。
企画とは、自分の居場所をつくること。
〝この人がいないとダメなんだ〟とまわりに認めてもらえる手段でもある。
オーバーに言えば、〝存在価値〟かもしれない。
なので、企画を考えるということは、実は誰にとっても身近なもの。
言いかえれば、企画とは、「あるある話」をすることと似ている。
例えば、「本屋さんで、なぜ人は、読んだらすぐに捨ててしまう雑誌なのに、一番上からではなく、真ん中辺の雑誌を手に取るんだろう」と言う。
すると、みんなが「ああ、あるある」と頷く。
こうした「あるある話」をするには、面白いネタに気づくという〝視点〟が一番大切。
秋元氏は日常的にさまざまな気づきをリュックサックにどんどん入れて、必要なときに取り出すという作業を行っているという。
重要なのは、リュックサックに入れるときや、あるいは取り出すときに、その素材に対してどれだけ想像力を働かせて拡大できるかということ。
そこにこそ、企画を生む秘訣がある。
そして、どんなときでもこういうことを考え続ける。
日常の中で耳にした何気ないひと言であれ、新聞であれ、テレビであれ、雑誌であれ、すべてに企画の入り口はある。
食材は、集めようと思わなくても気づけばいくらでもある。
企画の入り口は、他人の意見よりも、まず自分が面白いと思うかどうか。
「自分が正解だ」と思うことが一番大切。
そして、付箋を貼ったものがどれだけ記憶というリュックサックに入るかによって、おのずとつくることができる料理も多くなる。
と、このように自らの企画について語っている。
要は日常の中でいかにアンテナを張って、引っかかったモノをリュックサックに入れるかが大事ということではないだろうか。
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