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2020年11月 7日 (土)

米中AI戦争の真実/深田萌絵

Ai

 GFWに加わった新機能の一つに、中国共産党に不都合な言論を自動的に検出するものもある。これは、表向きはSNS上のヘイトスピーチを自動的に検出するために開発されたアルゴリズムだが、中国共産党によってSNS上の言論弾圧ツールとして利用されている。

今、米中は目に見えない戦争をしている。

米中が繰り広げるAI戦争の実態は、「監視」と「言論統制」だ。

世界中の人々の通信や家庭での会話を監視し、不穏分子をAIで予測して事前に取り除き、AIで言論・情報制御を行い、民主主義国家の有権者の投票行動をコントロールしていこうという流れが世界的に起こっている。

例えば、GFW。

GFW(グレート・ファイアウォール)とは中華人民共和国本土のインターネットに存在している大規模情報検閲システムとその関連行政機関の通称である。

中華人民共和国国内外で行なわれるインターネット通信に対して監視するだけでなく、接続規制・遮断も行う大規模なネット検閲システムである。

GFWは、そのビッグデータを解析して、思想ごとに分類している。

例えば、中国共産党に反抗する人間を特定するだけでなく、さらには危険度をレベル分けしていく。

その採点は社会信用制度にも反映されている。

一般的に「社会信用制度は、中国国内で中国国民が採点されている」と考えられている。

だが、実際は国外も含めてネットを利用するほぼすべての人々が採点されている。

例えば、ある人スマホがネットにつながった状態で、ブラウザ上で「習近平」と打てば、本人に知られることなくGFWはその人が習近平に関して検索しようとした情報を収集している。

誰が、どこで、キーワードを打ち込んで検索したかを収集して、ビッグデータとして活用している。

中国が世界中にあるAI技術を持つ企業に技術供与を依頼しているのは、GFWに犯罪予測機能を持たせるためだ。

少しでも早く、反共活動家となる不満分子を見つけ出し、デモやテロを未然に防ぎたいというのが習近平の悲願だ。

AIが活躍するのは、不満分子の特定だけではない。

反対分子の逮捕、社会的抹殺までが仕事なのだ。

人間は、たとえ冤罪でも「あの人は犯罪者かもしれない」という情報を与えられるだけで、「あの人を信用するのは止めよう」となり、いつしか「あの人の話はウソだ」と思うようになる。

中国共産党の真実を知る人間を世間が「信じるに値しない人物」だと認定すれば、その人物の言論は存在しないも同然で、わざわざ労して暗殺する必要はない。

あとは、いかに「あいつは犯罪者だ」と印象付けるかだ。

ターゲットを「信用に値しない」と印象付けるのに最も簡単な方法は「印象操作」だ。

この印象操作もあらゆる方法があるが、最も多いのがSNS上のネット世論工作によるものだ。

彼らの手口は、ターゲットが何を言おうが「デマだー」「被害妄想だ!」「精神病だ!」とコメントを続けることによって、その言論を読む人に対して印象操作を行うことである。

この手法はイメージが重要な政治家に有効だ。

AIを長年研究してきた研究者は、当初、人々の行動から発生するビッグデータを解析しているうちに人の行動を予想できるようになると考えていた。

その解析結果をもとにAIでパーソナライズされた広告を打ち出すと、かなりの確率で推薦商品が売れる。

その研究を続けているうちに、彼らはあることに気が付いた。

「AIが人の行動を予測しているだけでなく、AIが出した予想が人の行動に影響を与えている」と。

そして、そのような社会が今、目の前に迫っている。

米中のAI戦争は決して他山の石ではなく、私たちの問題だという意識は持つべきだろう。

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