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2020年11月21日 (土)

「値づけ」の思考法/小川孔輔

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 値づけ(価格戦略=プライシング=価格の決め方および見せ方)を思考していくに当たっては、次の3つのポイント(課題)を考慮しないといけません。
 ①季節や時間帯、顧客によって価格を変えるかどうか?
 ②利益を出すために、利幅(利益)を大きく取るか?
  あるいは、小さな利幅で売上増(客数、買上点数)を狙うか?
 ③売上と利益を増やすために、顧客の心理をどのように利用するか?

商品やサービスの値付けは重要だ。

絶妙な値付けは売上や利益を拡大させることができる。

経済学の公理の1つに、「価格弾力性は、粗利率の逆数になる」という定理(ドーフマン・シュタイナーの公式)がある。

日配食品の粗利率は約33%といわれているので、その価格弾力性はその逆数で約3(=1÷0.33)となり、5%の値引きで日配食品の売上個数は15%(=値引き率の3倍程度)伸びると推定できる。

その公理によれば、セブン-イレブンの場合は、7人に1人程度(15%)が値引きされた商品を選ぶと想定できる。

実際に、スーパーでは値引きシールが貼られた生鮮品はほぼ完売する。

したがって、少し控えめに見積もっても、食品廃棄率(現状では売上の2~3%程度)は0.5~1%に、特に弁当やおにぎりなどの日配食品の廃棄率は売上の3~5%程度(現状では売上の10%程度)に減少すると思われる。

つまり、食品廃棄ロス削減を目的とする5%のポイント還元という「上手な値引き」によって、消費期限が間もなく到来する弁当などの日配食品の購入をお客に促し、彼らの財布の紐を緩ませて、加盟店のオーナーの純収入が50~85%も増加する。

本部も最終利益が10%以上は増加する。

USJがダイナミック・プライシングの導入に踏み切ったのには、繁忙期にパーク内(園内)が混み合って、来場者の顧客満足度が低下していることが背景にある。

チケットの料金を変動価格にする狙いは、パーク内の混雑度を平準化するため。

しかし、USJにとって価格を変動させるメリットは、混雑の緩和だけではない。

価格変動制でチケットを販売することによって、最終的に利益を増やすことができるから。

繁忙期は入場料を割高に、閑散期は割安にする価格設定の方式は、「(時間による)差別価格制」と呼ばれるもの。

大手EC企業は、自社のWebサイトを頻繁に利用してくれている顧客の性別・年齢や収入、割引価格やクーポンへの反応の仕方、さらには個人的な趣味や購買行動の特徴などを熟知している。

そのため、どのタイミングで、どのくらいの値引き、あるいは値上げを提示すれば、顧客がどのように反応してくれるのか、おおよその予測をすることができる。

適切な価格を設定するために、コストを積み上げて検証するのは、もちろん大切なこと。

だからといって、モノをつくってコストが確定してから価格を決めていては、このご時世ではまったく売れない。

勝ち残るためには、スピーディで、ひとひねりした価格のつけ方が必要。

また、徹底したムダの排除が、値ごろ感のある価格実現のカギといえる。

どんな値付けをするのか?

企業の戦略がそこに集約されているということであろう。

 

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