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2020年11月28日 (土)

望遠ニッポン見聞録/ヤマザキマリ

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 私にとって近くて遠い、心地好さと拒絶が一体化した祖国、日本。母は「日本だけが世界じゃない」と言っていたけれど、日本という世界の複雑さと面白さは、こうして長く離れて暮らしていると、よりはっきり見えてくるものなのだ。

ジパングは、中国大陸の東の海上1500マイルに浮かぶ独立した島国で、莫大な金を産出し、宮殿や民家は黄金でできているなど、財宝に溢れている。

また、ジパングの人々は偶像崇拝者であり、外見がよく、礼儀正しいが、人食いの習慣がある。

これはマルコポーロ『東方見聞録』で紹介しているジパング、つまり日本。

この言葉に象徴されるように西欧の人にとっては日本は理解できない異国だ。

本書はイタリア人と結婚し、イタリアで暮らしている著者が、遠くの国から見た日本について語ったもの。

特にイタリア人と日本人とは全く違うという。

例えば映画「ゴッドファーザー」の中で、マイケル・コルレオーネの妹であるコニーが夫に対してヒステリーを起こすシーンがある。

あの壮絶な有り様を思い浮かべるとわかりやすい。

彼女もマフィアという複雑な家庭に属する立場上、何かと耐え忍ばなければならない環境に置かれている女性だが、キレる時は完全に、完璧にキレる。

夫がどんなに暴力夫だろうと何だろうと、じっとそれに耐え続けなければならないという意識は彼女の内には存在しない。

あのヒステリックシーンは決して映画のストーリーを面白くさせるために特別演出された女性の行動パターンではなく、西欧世界の中では極めて頻繁にあるもの。

イタリア女の恐ろしさはラテン系女子にありがちな大声で暴れたり皿を割ったりするなどの突発的なヒステリーだけでは済まされないところだ。

特に元凶が嫉妬というのは最悪なパターンであり、彼女らの憤りは寄生虫となって男どもの胸の内に執拗に凶悪な毒素を分泌し続ける。

自分が傷ついたその5倍は男達が落ち込んで、女神は最終的には自分しかいないのだと思わせるところまで持っていかないと納得がいかない。

そんな性質がイタリア女にはある。

男女を問わず、イタリア人というのは何かと大袈裟な人種だ。

画鋲を踏んだだけで救急車を呼ぶ人もいるし、日常生活で何か腑に落ちないことがあればすぐに裁判だ。

愛情表現の面においても日本人のように言葉で伝えなくてもそれぞれの気持ちを察知し合うなんてことは考えられない。

恋人同士に限らず、家族は何かのたびに抱擁してそれぞれの体の存在を認識し合う。

見知らぬ人とでも握手を交わすことでスキンシップは必ず取る。

これらは日本とは全く違う。

おそらく、このような人間関係はコロナ禍であってもなかなか変えることはできないのだろう。

本書を読んでみて、イタリアでコロナの感染が拡大したのも、致し方ないのかなと思ってしまった。

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