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2020年12月 6日 (日)

悪いヤツほど出世する/ジェフリー・フェファー

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 したがって、言葉が行動の代用になりがちだという事実をわきまえ、「リーダーシップの専門家」たちの話を鵜呑みにしてはいけない。彼らが実際に経営している企業の実態に注目することだ。離職率が30%にも達するような企業の経営者が人事関連の助言をしたら、疑ってかかる必要がある。実際、リーダーシップ研修を提供している一部のコンサルティング会社は離職率がきわめて高い。

リーダーは謙虚であれ、誠実であれ、そして部下への思いやりを持て。

一般的に優れたリーダーはこのような資質を備えるべきだと思われている。

しかし、現実のデータを分析すると、実は多くの成功しているリーダーはこうした資質を備えていない。

例えばジョブズは成功したリーダーの一人と数えられるだろう。

1980年代前半に当時のアップル・コンピュータは、存続が危うくなるような事態に直面していた。

AppleIIの成功を目の当たりにしたIBMがパーソナル・コンピュータへの参入を決意したのである。

大方の見るところ、アップルの敗退は時間の問題だった。

こうした状況で、アップルは1984年に初代Macintoshを発表する運びとなった。

初代Macintoshの発表は、1984年1月11日、アメリカン・フットボールの頂点を競うスーパーボウルのテレビ中継中に、伝説的な「1984」のCMによって全米に予告された。

その2日後に、株主総会の満員の聴衆の前で華々しくその姿を現す。

専門家も消費者もその魅力の虜になり、Macintoshは大成功を収めた。

ジョブズはあのたぐいまれな能力によって、アップルこそが世界でいちばんクールな会社であり、アップル製品は最もシンプルで美しいのだと、数十年にわたり世界中の人々に信じさせてきたのである。

困難な経済状況の中で会社が存続できるかどうかも、リーダーの能力に拠るところが大きい。

自分の会社はつぶれそうだと考えたら、社員は出ていくだろう。

それも、転職先を容易に見つけられるような優秀な社員がまず出ていってしまう。

そして優秀な人材が枯渇したら、会社の存続可能性はほんとうに危うくなる。

そこで、ウチの会社は大丈夫だと社員に信じさせることが、リーダーの重要な仕事になるわけだ。

成功を信じれば、みながんばって努力するので、ほんとうに成功する。

成功ややりがいを約束して優秀な人材を引き抜くのも、リーダーの手腕の見せ所である。

スティーブ・ジョブズはこの点でも超一流だった。

「君の時間はアップルで使うのが最も建設的だ」と信じさせたのである。

ペプシコーラの事業担当社長をしていたジョン・スカリーを口説くにあたり「色付き水を売り続けるのと世界を変えるのとどちらを選ぶのか」と迫ったというエピソードはあまりに有名だ。

しかもこれはほんの一例に過ぎない。

リーダーは、消費者には自社製品を買う気にさせ、投資家には自社に出資する気にさせ、有能な人材にはこの会社で働きたいと思わせ、サプライヤーにはこの会社と取引したいと思わせなければならない。

創業間もない企業であれば、二番目と三番目はとりわけ重要だ。

そのためには自社のリソースを魅力的に見せ、潜在性を多少誇大に見せなければならない。

そのためジョブズは大ぼらを吹いた。

リーダーシップをめぐる問題点は、根本的には次のような不一致の問題だと言うことができる。

・リーダーの発言と行動の不一致

・リーダーの行動と結果の不一致

・理想の普遍的リーダー像と現実のリーダーとの不一致

・リーダーシップの多元的な性格と人々が求める単純化されたリーダー像との不一致

・リーダーシップの自己評価と現実のデータとの不一致

・多くの人が求めるものと必要なものとの不一致

・組織や職場の改善に必要な行動とその実行との不一致

加えて、リーダーシップ教育産業が掲げる約束と、その教育や影響を受けたリーダーの言動やキャリアも一致していない。

スタンフォード大学ビジネススクールの教授である著者が、巷にはびこる「リーダー論」をウソだと断じているのも頷ける。

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