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2020年12月17日 (木)

相談しがいのある人になる/下園壮太

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 「味方と認められるまでは、耳を貸してもらえない。自信が回復しないと、アドバイスは受け入れてもらえない」
 このゴールデンルールを頭に叩き込みましょう。

悩み事にも、段階がある。

一番目は「普通の悩み」の層。

悩んではいるものの、比較的冷静な判断ができる状態。

ヒントさえあれば、新たな視点で問題をとらえなおしたり、解決のための方法を見出したりすることができる。

二番目は「悩みモード」の層。

悩みモードとは、その人本来の考え方や感じ方ではなく、少し偏って、しかも柔軟性がなくなった状態。

三番目は「うつ状態」の層。

悩みモードの特徴がさらに強くなり、思考や感情だけではなく、疲労感や不眠、食欲不振など身体的な苦しみも加わってくる。

普通の悩みであれば、5分間相談で対応可能だ。

通常この層の相談は、仕事の話なら日常のやり取りの中で、私事のテーマならランチタイムや幼稚園バスの待ち時間などでの日常会話の中に、紛れ込んでいるのが普通だ。

つまり、あえて「相談」という形をとらずに進められていることが多い。

「多くを語らず、要点を述べよ」「結論から説明せよ」は、今もビジネスシーンにおける報告の原則になっている。

つまり、これが「5分間相談」のベースになっている。

5分間相談とは、具体的な行動に結びつく情報交換であり、短時間に問題解決指向の会話のやり取りをする相談。

5分間相談は「アイデア」「情報」「はげまし」の3つを組み合わせて行う。

5分間相談は、日常の多くの相談をカバーする。

しかし、5分間相談では対応できない場面がある。

実際、物質が豊かになり、ほとんどのことを一人でやれる現代、誰かにあえて相談しようと思うときには、すでに相当の自助努力をした後。

つまり、誰かに真剣に相談しようとするときは、すでにかなり悩んでいる、悩みの深い相談者であることが多い。

長い間悩んだ結果の「ちょっと相談にのってもらえますか」という依頼であることが多い。

なので、誰かから改まって「相談」を持ちかけられたら、悩みはかなり深いと思って対応したほうが良い。

人にはピンチになったら自分の苦しさを表現したいという欲求が組み込まれている。

これを著者は「表現欲求」と呼んでいる。

「自分がピンチだとわかってくれている人がいる」そう感じるだけで、再び闘う力がわいてくる。

悩みの深い相談者は、5分間相談の直接的なアドバイスによって逆に傷ついてしまう。

そのことを理解するには、彼らが、相談をするときに持つ不安について知らなければならない。

それは、

「この人にわかってもらえるだろうか」

「こんなくだらない問題で悩んでいると嘲笑されないだろうか」

「つまらない問題で相談して、わずらわしいと思われないだろうか」

「それぐらい自分で考えろと、叱られないだろうか」

というような不安。

人を勇気づけようとするとき、私たちはどんな言葉をかけるだろうか。

・「たいしたことないよ、君ならできる」(はげまし)

・「みんなも耐えてる、踏ん張りどころだよ」(はげまし)

・「こういう考え方もあるよ」(新しい視点)

・「こうすれば、うまくいくよ」(提案)

・「君のここが問題だよ、こうすればいいよ」(解決法)

・「そうなってしまうのも無理もないよ」(反応への評価)

・「すごいね、うまくやっているよ」(能力の評価)

・「今のままでいいよ」(努力と能力への評価)

・「たいへんだったね、つらかったね」(共感)

・「とてもがんばっているね」(努力への評価)

・「きっと何とかなるよ、誰か助けてくれるよ」(慰め)

・「完全にできなくても当たり前だよ」(許し)

・「君のせいじゃないよ、君は悪くないよ」(責任を否定)

などのメッセージだ。 

1時間相談法では、「がんばれ」系メッセージを与える前に、まず「守ってやるよ」系メッセージを与える。

これが、1時間相談法の最大のポイント。

1時間相談法では、「がんばれ」系メッセージを出さない、というわけではない。

「がんばれ」系メッセージの前に「守ってやるよ」系メッセージを出すというだけのこと。

しかし、実際にはこれがなかなか難しい。

1時間素言う段法では最初の30分間、しっかりと話しを聞く。

味方になるには、まずは安心を与える。

「攻撃しない時間」が必要。

少なくとも30分は、この作業に時間をかける。

相談の第一段階では、「私は敵ではない、あなたを攻撃しない」ということから伝えなければならない。

まずは「30分、徹底的に聞く」という態度で、それを示す。

ここでいう「聞く」というのは、まったくしゃべってはいけないということではない。

二つの意味がある。

一つ目は、自分の意見を言わないということ。

二つ目の意味は、相手が話す時間を長くするということ。

そのためには自分が話す時間をできるだけ少なくする。

相手を、馬鹿にしない、宇宙人のようだと異端視しないこと。

同じ人間として必ず「そういうことだったのかぁ」と納得できるポイントがあるはず。

それを探しながら聞く。

そうすれば30分はあっと言う間に過ぎていく。

5分間相談では、ズバリと解決策を与えてあげる。

しかし、1時間相談法では、直接、解決策を考えるのではなく、「相談者が考える」支援をする。

考える支援をするということは、うまく頭が働くように、刺激を与えたり環境を整えたりするということ。

相談者が「冷静かつ頭が冴えた状態で、考えを整理する」ことをサポートすればいい。

そのためには大きく二つのことを行う。

それは、

①相談者の頭が働きやすい環境を作ることと、

②より良い発想への刺激を与えること。

30分間、徹底的に相手の話を聞いてから、テーブルを広げる。

テーブルを広げるとは30分間のまとめをするということ。

このテーブル広げによって、次の三つの効果が表る。

①話すことが中心だった相談者のリズムをいったん崩すことができる

②これまで相談者が話した要素を一気に相談者に見せてあげられる

③言葉のブレによる「自然な刺激」の提供ができる

そして相談の最後にアドバイスをする。

アドバイスによって相手の思考に刺激を与える。

相談者の思考から、ほどよく離れた思考、これが新しいヒントとなる可能性のある刺激。

二つの電極が接していても、あるいは離れすぎていても、雷は生じない。

ほんの少し離れた刺激が、新たな発想の火花を散らす。

①意識的に新しい考えを提示したものではなく、

②適切な距離を持っている、

そのような刺激が、相談者にとっては新しい発想のヒントとなる。

これを著者は、「スパークしやすい刺激」と呼んでいる。

アドバイスは10秒以内。

アドバイスの最初に「私だったら」と枕詞をつけ、最後に「どう?」という。

相談の一番のポイントは「私はあなたの味方です」というメッセージをいかに相手に伝えるかということであろう。

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