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2020年12月18日 (金)

日本の面影/ラフカディオ・ハーン

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 日本人のように、幸せに生きていくための秘訣を十分に心得ている人々は、他の文明国にはいない。人生の喜びは、周囲の人たちの幸福にかかっており、そうであるからこそ、無私と忍耐を、われわれのうちに培う必要があるということを、日本人ほど広く一般に理解している国民は、他にあるまい。

ハーンはたしかに日本という恋人と恋愛状態に陥っていて、日本のすべてを愛し、日本のすべてを追い求め、日本のすべてを彼の胸に抱きとめようとしているかに見える。

またある場合には、まるで日本という母親を求めている無邪気な子供のように振る舞っているように思われるときもある。

ハーンの紀行文の醍醐味は、まず、その土地土地の自然や人間の魂と向き合いながらも、きちんと事実関係の具体的なディテールもおさえながら書かれている点であろう。

そして、それが一個の絶妙な芸術作品にまで昇華されているところであろうか。

本書はハーンの印象派風の言語芸術家としての美意識と、足で稼ぐルポライター的な活力と、さらには民俗学者的な特異な嗅覚とが、渾然一体となった仕事と評価することができるのではなかろうか。

本書の中には、おもはゆくなるようなナイーヴな日本賛美があるかと思えば、いささか極端とも思える西洋批判も出てくる。

ハーン一流のロマン主義的誇張だとか、生来のキリスト教への反撥だとかが垣間見える。

現代の日本人にとっては、ハーンの作品はむしろ日本の良さや伝統を見なおす上で大切な相対的な視点を示しているのではないだろうか。

ハーンが描いたのは明治初期の日本だ。

でも、あれほどまでに日本を愛したハーンが今の日本を見たらどう思うだろう?

「私が愛した日本は何処に行ってしまったのか」と失望してしまうのではないだろうか。

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