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2021年1月 4日 (月)

自己肯定感が9割/工藤紀子

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 人間関係には、「自分が自分をどう思うか」、「自分をどう捉えているか」の自己認識の部分が大きく影響します。
 自分のことを受容し、自分を肯定的、好意的に捉えられている自己肯定感が高い状態では、他者に対しても肯定的で好意的になります。
 一方、自分を受容できず、自分を否定的に捉えやすい自己肯定感が低い状態では、他者に否定的に見られていると感じやすくなるため、自分が否定的に捉えている自己を守るための保身的な行動を取りやすくなります。

職場という特殊な環境の中では、攻撃してくる人、苦手と感じる人など、離れたくても離れられない人、わかりあえない人ともコミュニケーションは取らなくてはいけない。

また、ちょっとしたことがパワハラ、セクハラ、モラハラとなり、コミュニケーションを取ることがリスクとなっている現実もある。

自己肯定感とは、「ありのままの自分を、かけがえのない存在として、好意的・肯定的に受け止める感覚」のこと。

自己肯定感が低い人は、自分が満たされていないので、当然、他者に優しくすることができない。

また、自己肯定感が低いと、他者からのちょっとした攻撃や、行き違いで、心が折れてしまう。

また、すぐにイライラしたり、クヨクヨした気持ちにもなりやすく、感情が乱れる。

自己肯定感には、「社会的自己肯定感」と「絶対的自己肯定感」の2種類がある。

社会的自己肯定感とは、他者からの評価や相対的評価から生まれる自己肯定感。

絶対的自己肯定感とは、「自分で自分の存在価値を認めてあげること」で生まれる自己肯定感。

絶対的自己肯定感は、誰もが、今すぐに高めることができる。

なぜなら、絶対的自己肯定感は、根拠が必要ないからだ。

「すべての悩みは対人関係の悩みである」 と、アルフレッド・アドラーは断言している。

さらに、アドラーは、「仕事における失敗の90%は、知識や経験が足りないからではなく、そこに人間関係が築けないことが原因である」とも述べている。

実は、対人関係の悩みをつくり出す最大の原因は自分との関係が良好でないから。

「自己肯定感」が低いままでは、どうしても自分や他者を否定的に見る傾向が強くなる。

アメリカのギャラップ社が2017年に発表した調査結果によると、世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント調査で、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%だった。

これはアメリカの32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラス。

さらに、企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%という結果が出た。

その中で、「勤務先でどの程度ストレスを感じているか」を聞いたところ、「非常にストレスを感じている」「ややストレスを感じている」という回答を合わせると、男性では71・6%、女性では75・2%と、7割以上の人が日々ストレスを感じていることがわかった。

そこで原因になっていることを聞くと、1位は「上司との人間関係」、2位は「同僚との関係」となった。

「セルフエスティーム(自己肯定感)は組織におけるすべての人間関係の中心である」

と、ウィル・シュッツは著書『自己と組織の創造学』で述べている。

「チームワークの問題は、メンバーの違いから起こるのではなく、個々のセルフエスティーム(自己肯定感)の低さに由来しており、それがチームの中で柔軟性のなさや防衛を引き起こす」

「他の人との人間関係は、主に私が自分自身に関してどう思っているかによる」

「私自身が自分を重要だと思えれば、他者も私に肯定的なフィードバックを与える」

ともシュッツは述べています。 

自己肯定感とは、「自分の存在そのものを認める感覚」であり、「ありのままの自分をかけがえのない存在として肯定的、好意的に受け止めることができる感覚」のこと。

私たちの人生を「車」にたとえると、車のエンジンにあたるものが「自己肯定感」。

運転席に座るのは私たち。

車の馬力はエンジンの大きさで決まる。

自己肯定感が低いと、エンジンが小さな車で進んでいるようなもので、平坦な道は問題なく走れるが、馬力は弱いので、重い荷物を乗せたり、上り坂になるとスピードが減速してしまう。

重い荷物や上り坂とは、人生で問題や困難に直面したとき。

逆に、自己肯定感が高いと、エンジンが大きく馬力がある車で進んでいるので、たとえ重い荷物を積んでも、上り坂という困難や問題に直面しても、それを乗り越えてスムーズに進んで行ける。

日々生きている中で、楽しそうに人生を歩んでいる人、自分の能力が発揮できて仕事で成果を上げている人、人間関係が良好で自分の望みや夢を次々と実現している人は、置かれた環境や能力以前に、「自己肯定感」という土台がしっかりしている。

では、「自分との関係が良好でない」とはどのような状態なのか。

それは、自分に好意的になれず、どちらかというと批判的、否定的で、自分を信頼できていない状態。

次に、「自分との関係が良好である」とは、どのような状態を言うの。

それは、自分に好意的で、肯定的であり、自分を信頼し、安心感を持っている状態。

ウィル・シュッツは『自己と組織の創造学 ヒューマン・エレメント・アプローチ』の中で、私たちには自己概念を支える3つの感情があると言っている。

それは、〝自分は好かれている〟という「自己好感」、

〝自分は重要(大切)である〟という「自己重要感」、

〝自分は能力がある〟という「自己有能感」。 

「人は脅威を感じたり、当惑したり、自己価値を脅かされそうになると、無意識に自分の中に深く根差した行動の〝マスタープログラム〟に戻ってしまう」

と、組織行動学のクリス・アージリス博士は述べている。

そのときの行動は、自分の地位や面目を保つために、頑なまでの自己防衛的態度で自分を正当化しようと、あらゆる脅威に対する反射的な行動を取るというもの。

私たちが誰かに対して、嫌な気持ちや感情的になるときは、なんらかの自己防衛のスイッチが入ったサイン。

それは、何かに反応して、自己価値が脅かされる危機を察知している。

反射的行動には次の6つのタイプがある。

・他者からの承認を過度に求めるタイプ

・自分にも他者にも完璧を求めるタイプ

・他者よりも常に優位になろうとするタイプ

・人を過剰に援助しようとするタイプ

・自己非難、自己否定をするタイプ

・自分は関係ないと問題から逃避するタイプ

以上6つのタイプだ。

「社会的自己肯定感」は、他者評価や結果などが拠り所になっているので、外的要因によって左右されやすく、それだけで自己を保とうとしても状況が変わると、自分を支える術を簡単に失ってしまう。

「絶対的自己肯定感」は、外的要因や他者評価がどうであっても、自分の存在そのものの価値は揺らがないという感覚が持てるので、何があってもその土台は崩れない。

自己肯定感を高める5つのステップがある。

ステップ1 ありのままの自分を認める

ステップ2 ありのままの自分を受け入れる

ステップ3 ありのままの自分を大切にする

ステップ4 自分の価値を感じる

ステップ5 自分を信頼する

まず、ステップ1はありのままの自分を認める。

「自分のありのままを認める」とは、自分の良いところだけでなく、嫌だと思うところや弱点、短所がある自分であっても、過去に失敗をしたり、まだまだ満足できない自分であっても、そんな自分のあり方すべてを含めた、まるごとの自分を認めること。

様々な気質や要素を持っている自分を、「いい、悪い」で判断せずにそのまま認めていく。

ステップ2はありのままの自分を受け入れる。

ステップ1で、あるがままの自分の現状をそのまま認められたら、その自分をまるごとOKしてあげる。

この場合、認めたくない現状を「受け入れる」ときに重要となるのが、その状況をつくり出している理由を自分が理解してあげること。

そこで、自分が見ようとしていなかった「そうじができない状況」をつくり出している理由に目を向けてみる。

すると、自分で納得することができる。

ステップ3はありのままの自分を大切に。

「ありのままの自分を大切にする」とは、心身ともに、自分を心地良くすることや自分の健康にも意識を向けることはもちろん、自分の感情や気持ちを理解して、どんなときも自分の一番の味方になり、自分に愛情を注いであげることも含まれる。

自己肯定感を高める上で、感情を切り離して考えることはできない。

「感情を理解する」ことは、「自分を理解する」こと。

それが、自分を大切にすることになる。

自分の中にわき上がるさまざまな感情がどんな理由でできているのかを理解してあげると、感情に飲み込まれ、振り回されることがなくなる。

ステップ4は自分の価値を感じる。

自分の行為や言動、努力や成果に対して、「自分は良くやった」と自分で認められると自己評価につながる。

「絶対的自己肯定感」が持てると、他者からの評価も肯定的に受け止め、健全に自己価値として積み上げている。

そこで、「社会的自己肯定感」を高めていける。

ステップ5は自分を信頼する。

「信用」には担保や信用するための根拠が必要となる。

「自分を信頼する」とは、自分を無条件に信じられること。

ステップ1から3で、「絶対的自己肯定感」の土台ができて、ステップ4の自分の価値を感じられるようになると、外的状況がどうであっても、そのままの自分を信頼できるようになる。

これが確固たる自信をつくる。

自己肯定感が高まり、自分への絶対的な信頼感が持てると、これからやろうとしていることに対して「自分がやることはうまくいくはずだ」、「自分ならできるはずだ」と未来の自分を信じることができる。

それを「自己効力感」と言う。

自己効力感は、カナダの心理学者であるアルバート・バンデューラ博士によって、定義した。

博士は著書(『激動社会の中の自己効力』の中で、「自己効力感を持てると、人は逆境にあっても、それがよい方向へ物事を変化させていけると信じられ、自分の能力に対して楽観的で肯定的な見方ができる」

さらに、「困難な仕事を、避けるべき脅威としてではなく、習得すべき挑戦と受け止めて進んでいくことができる」

と述べている。 

アメリカの精神科医エリック・バーンが「交流分析」の中で提唱した「I'mOK.You'reOK」という考え方がある。

これは、自分と他者の違いを受け入れ、お互いの存在価値を認めていくことで、自分らしく、個性を自由に表現して、他者と健康的に関わるための土台となる。

この姿勢が持てる人と一緒にいると、安心して助け合い、思いやりを自然に発揮できる環境がつくれる。

仕事面でも協働体制が取れる。

コミュニケーションの自己表現には、3種類あるといわれる。

自分も相手も尊重する「I'mOK.You'reOK」のアサーティブ(主張的)。

自分は尊重するが相手は尊重しない「I'mOK.You'renotOK」のアグレッシブ(攻撃的)。

自分は尊重せず、相手は尊重する「I'mnotOK.You'reOK」のノンアサーティブ(非主張的)。

あなたの考えも、相手の考えも、どちらが正しくて、どちらが間違っているということではなく、どちらも正解なのだ。

人は年齢に関係なく、自分の考えがベースとなる「正解」を持っている。

パワハラやセクハラ、モラハラなどが社会問題になっているが、その根底には、パワハラができる立場の人の存在がある。

パワハラに関しては、我慢せずに訴えればいいという意見もありますが、そう簡単ではないのも事実。

パワハラをする人は、ドラえもんに出てくる「ジャイアン」のような存在。

自分はすごいとアピールしたいし、自分の非を認めず、人のせいにする。

自分の意見が通らなかったり、自分の立場を危うくする存在には、立場を利用して攻撃したり、横暴になる。

自分のストレスの矛先を自分より明らかに弱いものに向ける傾向がある。

反対に、パワハラを受けやすいのは、「のび太」のように、気弱で優しく、どちらかというと自分に自信がなく、自分よりも力が強い相手に意見することができないタイプ。

嫌いな人が自分を苦しめるのではなく、その相手を自分がどう見ているか、どう考えているかが、自分を苦しめていたと気づけると、相手を変える必要がなくなる。

自己肯定感が低くなると、自分を否定的に見てしまうため、外側で起こっている出来事も、事実を歪ませて「ネガティブ色のメガネ」で見るようになる。

そこで、ものごとを肯定的に見て、「ネガティブな面」から「プラスの面」がよく見えるメガネに変えていくようにする。

相手がたとえ機嫌が悪くても、それは相手の問題であると理解することができると、「相手の感情は相手のもの」と、相手の感情を自分に同化して考えずにすむ。

自分の中の伝えきれなかった未消化な思いを全部吐き出せると、誰にも迷惑をかけずに心はすっきりする。

本書には、絶対的自己肯定感を高めるためのシンプルな5つのステップ、そして、事例とともに他人のタイプ別、仕事のシーン別で、自己肯定感を下げず、コミュニケーションを良好にする方法が記されている。

できることから実行してみるとよいのではないだろうか。

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