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2021年2月16日 (火)

両利きの組織をつくる/加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ

A

 組織が進化するためには、異なる二つの組織能力が必要とされる。ひとつは「(既存事業を)深掘りする能力」(exploit)であり、もうひとつは「(新規事業を)探索する能力」(explore)である。両利きの経営とは、企業が長期的な生き残りを賭けて、これら相矛盾する能力を同時に追求することのできる組織能力の獲得を目指すものだ。

両利きの経営を実現する上でカギとなるのは、組織カルチャーのマネジメント。

成功してきた組織には、「慣性の力」(Inertia)が働くという運命がある。

成功した組織は、過去の経営環境に過剰適応してしまった結果、環境が激変する局面では適応できず、衰退してしまうという法則だ。特に、大手成熟企業では、PDCAサイクルをベースとした効率性の追求という罠にはまっているケースが多い。

日本の成熟企業の多くがこの罠に陥っている可能性がある。

実際に組織開発を展開する上での最大の障害は、当事者間で、「組織が変わる」ということについてのイメージを共有できていない点だ。

「当社は変わらなければならない」と号令している経営者、中期経営計画を策定している経営企画部、現場で事業を回している事業本部長、人・組織を主管している人事部長、等々、当事者たちそれぞれが持っている「組織が変わる」のイメージがバラバラなのだ。

本当に組織を変えるつもりならば、まず組織の何を変えるのかについて当事者間で合意する必要があるだろう。

「新しく何を始めるのか」、「そのために何をやめるのか」、その一方で「何は引き続き継続(強化)するのか」。

少なくとも、このレベル感で共通のゴール・イメージを持つ必要がある。

組織を語る際に大切なのは、組織と戦略の両方に目を向けた、組織経営論という視点だ。

企業の存在目的(WHY)に対して、戦略(WHAT)と組織(HOW)は車の両輪の関係にある。

存在目的のために戦略論があり、その戦略を実行するために組織論(何のために、何を、どうやるのか)がある。

このトライアングルがつながった「組織経営論」を語らなければならない。

戦略に合わせて組織が進化していくことがある一方で、組織独自の取り組みから新たな戦略が形成されるということもある。

この循環作用の中で、「組織能力」(オーガニゼーショナル・ケイパビリティ)が形成される。

組織能力とは、組織内の人のつながり方・機能の組み合わせによって生まれる、組織の実行力のことである。

組織が自らを次の段階へと進化させるためには、以下の一連のプロセスをたどらなければならない。

自社の存在目的を再定義する(組織アイデンティティ)

どの領域で自社は生き残るのかを見極める(戦略的ポジショニング・位置取り)

それをどう実現するのかを決める(実行するやり方)

このプロセスを実践するには、自社が既に持っている強み(ブランド力・技術力・生産能力・顧客ベース・販売チャネル・人材、等)を軸足として活かしつつ、新たな事業領域の探索を可能とする経営手法が必要となる。

それが「両利きの経営」なのだ。

本書を読んで、日本の多くの企業が制度疲労を起こしていると感じた。

「両利きの経営」は必要だ。

でもそれをやるにはかなり勇気と覚悟がいる。

そんな経営者はどの位いるのだろう。

今の大企業の経営者は多くはサラリーマン経営者なのだから。

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