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2021年2月13日 (土)

戦略「脳」を鍛える/御立尚資

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 戦略とは「ありたい姿」マイナス「現状」であり、「ケンカのしかた」であると定義すると、「ユニークさ」をつくり出すことこそが、勝つための要諦だということがはっきりする。経済学においても、「超過利潤を得るためには、市場を不完全な状態にする。すなわち自社が競争相手と全く違うユニークな地位を占める必要がある」とされている。 

本書では、「インサイト」を中心課題として取り上げている。

「勝てる戦略」をつくるためにはアカデミックな勉強だけではなく、「ある種の『頭の使い方』を身につける訓練が不可欠」。

経営の場でも、プロ同士が全力で戦う自由市場においては、戦略論という定石を当然知ったうえで、新たな戦い方をつくり上げる「プラスアルファの能力」を身につけた者だけが、自らを差別化し、競合優位に立つことができる。

この「プラスアルファの能力」を、BCGは「インサイト(Insight)」と呼んでいる。

インサイトという言葉は、日本語にすると「直観」あるいは「洞察力」という言葉になり、ややニュアンスが異なってしまう。

BCG流の「インサイト」をあえて意訳するならば、「勝てる戦略の構築に必要な〝頭の使い方〟、ならびにその結果として得られる〝ユニークな視座〟」という感じになろうか。

「インサイト」とは、「勝てる戦略の構築に必要な〝頭の使い方〟、ならびにその結果として得られる〝ユニークな視座〟」のことである。

公式1 ユニークな戦略=定石+インサイト

公式2 インサイト=スピード+レンズ

一方、「レンズ」とはよりユニークな仮説をつくり出すための「モノの見方」であり、思考のツールである。

定石を加工・応用していくうえで、どこかで自分の思考を非連続にジャンプさせることができれば、戦略のユニークさはより際立ったものとなる。

たとえスタートポイントが万人が知っている定石だとしても、仮説進化の「スピード」と仮説をユニークにする「レンズ」の使い方を身につけていれば、勝てる戦略、ユニークな戦略に到達することができる。

この観点からインサイトは「スピード」と「レンズ」の二要素に読み替えることができる。

思考のスピードを因数分解すると、「パターン認識」、「グラフ発想」、「シャドウボクシング」という要素に分けられ、これら三つの関係は次ような公式にまとめられる。

公式3 スピード=(パターン認識+グラフ発想)×シャドウボクシング

棋士の場合に当てはめて考えるなら、パターン認識とは過去の定石・定跡を覚えて使いこなすこと。

グラフ発想とは盤面を右脳でビジュアル的にとらえて指し手のアイデアを考え出すこと。

そしてシャドウボクシングとは、考え出した指し手を論理的にチェックし、納得できる答えを導き出すまで右脳と左脳で仮説と検証を繰り返すことにあたる。

戦略を立案する場合なら、この公式は次のような意味になる。

「戦略論のエッセンスをパターン認識化して使いこなし、グラフ発想で右脳をフル活用して仮説を生み出すこと。そして、将棋の場合同様、右脳左脳両方を使ってシャドウボクシングを行ない、仮説の検証・修正・再検証というプロセスを猛スピードで実行していくこと」。

シャドウボクシングを通じて、右脳での「自分には通じるイメージ発想」と左脳での「他人にも通じる論理化」を積み重ねることで、最終的には他人にも理解し、納得してもらえる論理が完成する。

シャドウボクシングは、戦略の実行可能性アップにも大きくかかわっているのだ。

インサイトをどんどん身につけてしまう人は、物事を二重人格的に考えられる人だとわかった。

二重人格的と表現したのは、物事を考えるときに自分のなかで全く逆の立場に立ってみることが、ごく自然に実行できるという意味だ。

「頭の使い方」は人それぞれであり、個人差がある。

その事実を認識して、まずは自分がよく使っている「頭の使い方」を把握し、そのうえで普段使い慣れていない、いつもとは違う「頭の使い方」を意識して実践してみる必要がある。

実際、頭の使い方には思いもよらないほどクセがあるものだ。

効率的に戦略脳を鍛えるためには、自分の頭の使い方にはクセがありバイアスがかかっていることを普段から意識し、いつもと違う使い方を積極的にしていかなくてはならない。

まず自分の頭の使い方のクセを知ることからはじめてゆきたい。

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