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2021年2月 4日 (木)

天才たちのライフハック/許成準

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 アルベルト・アインシュタインも、毎朝、何を着るのか考えるのが時間の浪費だとして、毎日同じ服を着た。この習慣は、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグや、スティーブ・ジョブズも持っていた。
 ザッカーバーグは同じ服だけでいっぱいのクローゼットを公開したこともある。
 これは日常における選択を最小にして、生活をシンプルにするための習慣だ。

圧倒的な成功を収めた〈天才〉と言われるような人と、普通の人との違いは何だろう?

人の成功を決める要因は、運を除けば知性やその分野への専門知識が重要だと思われる。

こうした個人の力量は、ある程度は先天的な要素により、ある程度は後天的な要素によって決まるものと思われる。

では、成功に必要な、後天的な要素とは何だろう?

まだはっきり証明されたわけではないが、多くの研究者のおかげで、後天的な要素を左右するものとしては、「習慣」がもっとも有力とされている。 

最近では、毎日の小さな行動で、人生に大きな変化をもたらすテクニックを「ライフハック」と読んでいるが、圧倒的な成功を収めた天才たちが、ライフハックに使った道具こそ、習慣だったといえる。 

ヘミングウェイはタイプライターで小説を書いていたが、そのタイプライターはスタンディングデスクの上にあった。

なぜこのような執筆スタイルをとっているのかというと、まさに短く、簡潔な文体を追求するためだという。

座って書いていると、どうしてものんびりとして、一文が長くなりやすい。

だから、彼はスタンディングデスクを使ったり、片足で立ったりしながら小説を書いたのだという。

多数の研究によれば、立って働くと頭脳が活性化され、集中力が高まるのだという。

動脈硬化や心筋梗塞、そしてがんが発生するリスクも低下するという。

もちろん何よりの効果は、仕事中に余計なことをせず、最短で作業を終えられるようになることだ。

アメリカのシリコンバレーもこの効果に着目し、立って働く「スタンディングオフィス」を導入する企業が増えているという。

小説を執筆しているときのアガサ・クリスティーには、特別な習慣があった。

冒頭から書き始めずに、しばしば殺人シーンから書いたのである。

犯行がどう行われたかを詳しく描いた後に、その前後のストーリーを補完していく手法だったのだ。

彼女がこうした手法を採用した理由は、推理小説の核心が殺人シーンだからである。

未知の犯人の手によって、不思議な方法で殺人が行われると、読者の興味は最高潮に達する。

その興味を推進剤として「誰が」、「どのような方法で」、「なんのために」その殺人を犯したのかを究明する過程を、面白く読ませるのが推理小説の基本的な構造である。

彼女の小説が現代においても人気がある理由は、その興味の引き方が、他の作家たちよりずっと巧みだからだ。

物語の構成や展開の緻密さもあるが、なにより印象的なのはその殺人の方法である。

つまり、彼女の手法は自分の仕事の核心部分に真っ先に手を付けて、残りをそれに合わせて処理していくというものだった。

このような仕事術は、あらゆる仕事に応用できる。

たとえば会社で企画書やプレゼンテーションのための書類などを作成するとき、頭から書く必要はない。最も核心的な部分を作って、それに合わせて残りを処理すれば良いのだ。

読書するときにも、最初から読まず、結論部分や、興味のある箇所から読む方法もある。

ドフトエフスキーは、ひとつひとつの作品を、自身最後の作品だと考えて執筆する習慣を持っていた。

なぜ、このような考えを持つに至ったのかといえば、彼の人生に起こったある劇的な事件が大きく影響している。

ドフトエフスキーが生きた時代のロシアは皇帝が統治していたが、同時に「フランス革命」の影響がヨーロッパ全土に広がりを見せていた時期でもあった。

銃殺刑を宣告された彼は、刑場で将校が罪を読み上げているのを聞きながら、思考が混濁していくのを感じていた。

教会の鐘塔を照らしていた日光が、かかってきた雲に遮られていくのを見ながら、ドフトエフスキーはこんなことを考えた。

「もし私が死ななければ、もし生きれば私の人生は永遠のように感じられるだろう。もし生き残れば人生の1秒も浪費しないだろう」

そして、頭に頭巾が被せられ、兵士が銃を発射しようとした、まさにその時。

刑場に馬車が到着して、皇帝が特別に彼らの刑を減刑したことを知らせた。

こうしてドストエフスキーは死刑になる代わりに、極寒のシベリアへ送られて4年間の重労働を課せられた。

想像を絶する環境を耐えながら、彼は頭の中でいろいろな作品の構想を練った。

シベリアから戻ってきたドフトエフスキーは、人が変わったようだった。

作品ひとつひとつが自分の遺作だと思って、渾身の力作を発表し続けた。

『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』……。

映画監督、クエンティー・タランティーノによると、彼は聞こえてきたジョークや、友達が雑談のなかでふと口にした面白いことをすかさずメモする習慣を持っているという。

たとえば、友人同士で集まってビールを飲みながら騒いだ後、帰宅したタランティーノはせっせと、さきほど友人が話した傑作ジョークを思い出して書き残しておくのである。

このようなメモ習慣は、彼がシナリオを執筆するうえでとても役に立つという。

いくら頭が切れる映画監督でも、何もないところからアイデアをひねり出すのは不可能だからだ。

ベートーヴェンは毎日、ランチを食べると、紙と鉛筆を持って3~4時間も散歩した。

たったひとりでウィーンの森を歩くことを好み、歩いているうちに曲想が頭に浮かぶと、すかさず持っていた紙に書き留めた。

初めてメモした曲想はかなり幼稚なものだったそうだが、彼はそのアイデアを発展させて、荘厳な交響曲を作り出した。

午後の散歩は、彼にとってそれほど大切な時間だったのだ。

同じくウィーンで活躍した19世紀の大作曲家、グスタフ・マーラーは、ベートーヴェンの習慣をそのまま取り入れて、ランチの後に3~4時間散歩したという。

2014年にスタンフォード大学の教育学部が中心となって行った研究では、座ったままよりも歩いているときのほうが、新しいことを閃いたり、物事を生み出したりするときに関わってくる「クリエイティブな能力」が、平均して60%も高まることが明らかになっている。

ビジネスマンが毎日3~4時間も散歩することは難しいが、一駅手前の駅で降りてオフィスまで歩いたり、休日に時間をとることはできるはずだ。

あまり知られていないが、スティーブ・ジョブズは感情的になるとすぐ泣いていた。

若いころ、Appleを創業しようとしていたとき、パートナーのスティーブ・ウォズニアックが起業に消極的になると、ジョブズは激しく泣いた。

Appleが大きくなったあとも、社員が自分の意図とは違った製品を提案してくると、社員たちの前でも泣いた。

だが、もっとも感情を露にしたのは、感動的な想像をしたときである。

彼はこう言っている。

「私はたびたび、完璧な純粋さ――純粋な霊魂と愛――の中に私がいることを感じる。そのとき、私はいつも泣く」

このジョブズの一側面は、彼が並外れて豊かな感受性を持っていたことを示している。

この感受性に着目すれば、ジョブズが関わった製品群が、なぜ、初めて手にとったときの感触や、直感的な操作を重視していたのかが理解できる。

これら天才たちの習慣。

あとから科学的な根拠が解明したことも多い。

一つでも真似してみたら良いのではないだろうか。

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