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2021年2月21日 (日)

ESG思考/夫馬賢治

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 オールド資本主義、脱資本主義、ニュー資本主義、陰謀論。この4つの立場は、過去20年間でダイナミックに変化を遂げてきた。最も大きな変化は、経営や金融の主流にいた勢力が、オールド資本主義からニュー資本主義へと立場を転身させたことにある。この転身をもたらした新しい考え方を、私は「ESG思考」と名付けた。

それまでのオールド資本主義の観点からは、環境課題や社会課題を考慮すれば投資パフォーマンスが下がってしまうのであれば、環境課題や社会課題を考慮すべきではない。

しかしそれでも機関投資家に環境課題や社会課題を考慮することを求めていきたいのであれば、考慮することで投資運用利益が最大化できることを示さなければいけない。

そうでなければ機関投資家を動かすことはできない。

「アセット・マネジメント・ワーキンググループ」は、「環境、社会、コーポレートガバナンス(ESG)」を考慮することで、株主価値を上げられるかどうかを判断することをミッションに置いた。

証券会社11社に対し、11業種についてESGが株価に与える影響の調査を依頼し、報告内容を基に、本当に株主価値を上げられるかどうかを分析していったのだ。

11社が出した結論は、「これらの課題を有効にマネジメントすれば、株主価値の上昇に寄与する。そのため、これらの課題はファンダメンタル財務分析や投資判断の中で考慮されるべきだ」というものだった。

この瞬間に、オールド資本主義思想に大きな楔が打ち込まれ、「環境・社会への影響を考慮すると利益が増えるので、環境・社会への影響を考慮すべき」と考えるニュー資本主義が誕生した。

リーマン・ショックを機に、欧米の機関投資家とグローバル企業は、サステナビリティ経営とESG投資という2つの翼を手にし、ニュー資本主義へと大きく羽ばたいていった。

2006年に国連責任投資原則(PRI)が発足。

そしてリーマン・ショックを機にサステナビリティ経営が始まると、欧米ではオールド資本主義からニュー資本主義へのシフトが徐々に盛り上がりをみせる。

ニュー資本主義とオールド資本主義では、経済認識がまったく異なる。

たとえば緻密な四半期決算はオールド資本主義で高く評価されていたが、ニュー資本主義ではむしろ邪魔もの扱いされたりする。

逆もまた然りで、オールド資本主義では無用の長物で経済活動の足枷だった二酸化炭素排出量削減が、ニュー資本主義では削減しなければ資金調達が滞りかねない事態になっている。

ESG思考は不況期にこそ真価が問われる。

長期思考をし、将来の事業成長や価値創造にとって重要な項目を見定め、そのリスクと機会にしっかりと布石を打っていくことは、どのような経済状況下でも必要なものだ。

これを不況の時代でも実行できる経営力があるかどうかが、将来の企業競争の帰趨を決することになるということであろう。

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