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2021年2月14日 (日)

ヤフージャパン市場との対話/浜辺真紀子

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 「会社は誰のためのものか?」
 この質問に対しての回答は次のとおりだ。
「会社はすべてのステークホルダーのためのものだ」
 ヤフーは、ステークホルダーを以下のように定義している。
「利用者」「株主・投資家」「取引先」「従業員」「地域・社会」。


ヤフーは、2016年に設立20周年を迎えた。

環境が激変する現代、しかも栄枯盛衰が激しいインターネットの世界で20年成長し続ける企業は、世界的に見ても稀有な存在だ。

何が、その成長を促してきたのか。

その要因として、以下のものが挙げられる。

1つめは、経営陣及び従業員が、常に「利用者が楽しく便利に使えるサービスを提供しよう」という強い想いを持ち続けたこと。

そして2つめに挙げるべきは、米国で成功した事例をいち早く日本に取り入れる「タイムマシン経営」を標榜し実行したこと。

インターネットが現れてから10年以上の間、米国のインターネット事情は日本よりも推計で2年程度進んでいた。

米国で流行っているものは、例外を除けば日本でも流行る。

米国ヤフーが試行錯誤を経て成功させた事業モデルやサービス、同社の競合が成功させたサービスを日本にいち早く導入すれば、成功への近道になる。

インターネット黎明期にサービスを開始し、利用者が急増するヤフーのサービス〝Yahoo!JAPAN〟上で新サービスを展開すれば、必ず成功する。

ヤフーは、この「タイムマシン経営」で、利用者数とサービスの幅を急拡大していった。

3つめとしては、「タイムマシン経営」に取り組みつつ、インターネットが一般家庭に普及する前にサービス提供を開始し、「Yahoo!JAPAN=インターネット」という〝常識〟を日本のインターネット利用者に広めたことだろう。

当時、「ヤフーの理念」は次のとおりであった。

「ヤフーは、なにかを見つけたり 誰かを探したり なにかを買いたく(売りたく)なった時に いつでもどこからでも アクセスする唯一の場所になる」

「日本で唯一の場所」になるために、経営陣と社員が寝食を忘れて業務に取り組み、いち早くサービスを提供したことが、ヤフーサービスの利用者を増やすと同時に、ブランドを定着させた。 

20期連続増収を続けるヤフー株式会社と消滅した米国ヤフー。

風土や文化の違いがあるにしても、この対照的な結果は、どうして生じたのだろうか。

日本のヤフー経営者は米国ヤフーのように頻繁に代わっていない。

設立後6カ月間は、創業間もないこともあり、孫が暫定的な代表取締役社長となった。

しかし、同年7月に孫は退任し取締役会長に就任、井上雅博が代表取締役社長兼CEOとなる。

井上はその後16年にわたり、ヤフーの代表取締役社長兼CEOとして経営の舵を取ってきた。

インターネットの急激な普及と、環境の大きな変化。井上は米国のインターネット産業の進化を注視しながら、事業やサービスの拡大を着実に行い、日本におけるヤフーのポジションを確立した。

メディアなどへの露出を好まなかったが、社内では強いリーダーシップを発揮していた。 

ヤフー株式会社は、ソフトバンク株式会社から60%、米国ヤフー[YahooCorporation:現アルタバ]から40%の出資を受けた合弁会社として1996年1月に設立された。

URLを知らなくても、望んだインターネットサイトにたどり着ける。

当時のヤフーが目指したサービスは、まさにこれである。

日本語のウェブサイトのURLを集め、ツリー構造のカテゴリに分類した。

利用者は、このディレクトリサービスの中のカテゴリをたどったり、ディレクトリ内の検索を行ったりすることで、望みのサイトを見つけることができるようになった。

井上がよく言っていたことがある。

「外国人が自国以外でインターネットメディアを提供することは、難しいと思う。インターネットのコンテンツには、ローカル性がある。例えば、Yahoo!JAPANのトップページで『ラーメン特集』を提供すると、ものすごい数の閲覧が集まる。中国の人には理解できない現象だろうと思う」

ヤフーが成功した理由のひとつが、そこにある。

米国ヤフーから派遣された責任者がサービス運営の指揮をとるのではなく、井上をはじめとする日本人経営者が経営やサービス展開の責任者となっていたことが、功を奏したものと考えられる。

日米ともに、ヤフーには「MyYahoo!」というサービスがあった。

これは、IDにログインすることにより、ヤフーが提供するニュース、天気、路線情報、メールなどの各サービスを画面の好みの場所に配置して、オリジナルのトップページを作成することができる個人用ポータルサイトサービスだ。

米国ヤフーではこのサービスの人気が高く、オリジナルポータルサイトをPCのスタートページに設定している人の割合が多いと聞いている。

一方、日本のヤフーにおいては、「MyYahoo!」のサービス提供を開始したものの、PC、スマートフォンともに利用率は極めて低く、2016年にサービス提供を停止している。

「皆と同じものを見ることで、連帯感と安心感を得ることができる」という日本人独特の性質が、この違いを生んでいるのではないかと考える。

インターネットは生活に深く根付いている。文化が異なれば、インターネット上のサービスにも差異が発生する可能性がある。

外国人にとっては、理解しがたいことも起こり得る。

20期連続増収を続けるヤフージャパンと消滅した米国ヤフー。

その違いを生んだのは、良いところはマネしながらも、日本の独自性を開発し歩んできた結果。

つまり、守破離を行ってきた結果なのではないだろうか。

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